【ペインクリニック専門医解説】湿布や痛み止めで治らない痛みに。「神経ブロック注射」が痛みの悪循環を断ち切れる理由

【医師解説】湿布や痛み止めで治らない痛みに。「神経ブロック注射」が痛みの悪循環を断ち切れる理由

「腰やお尻から足にかけてピリピリ痛む…」
「整形外科で湿布やロキソニンをもらっているけれど、薬が切れると元に戻ってしまう」
「痛みのせいで夜もぐっすり眠れず、仕事や家事に集中できない」

こうした長引く痛みを抱えながら、「年齢のせいだから仕方がない」「我慢するしかない」と諦めていませんか?
日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医の立場からお伝えすると、我慢し続けて長引く痛みは、体に新たな害をもたらす「痛みの悪循環」を生み出してしまいます。

今回は、一般的な湿布や痛み止めでは改善しにくい痛みに効果を発揮する「神経ブロック注射」について、その仕組みや適応、当院で導入している最新の超音波(エコー)ガイド下の安全性、受診前に知っておきたい注意点を分かりやすく解説します。

◆ 本記事の目次

  • 痛みが長引く最大の原因「痛みの悪循環」とは?
  • なぜ湿布やロキソニンが効きにくい痛みがあるのか
  • 神経ブロック注射の仕組み|「リセットボタン」を押す治療法
  • 【院長コラム】トリガーポイント注射との違いと使い分け
  • 進化した「超音波(エコー)ガイド下神経ブロック」のメリット
  • どんな症状が適応になる?当院で対応している主な疾患
  • 安全に受けていただくための「3つの注意点」
  • まとめ|痛みを我慢せず、専門医へご相談ください

痛みが長引く最大の原因「痛みの悪循環」とは?

そもそも「痛み」とは、体に何らかの異常や危険が起きていることを脳に知らせる「生体の警報機(アラーム)」です。怪我をした直後や急性期の痛みには、患部を安静に保つという大切な役割があります。

しかし、痛みの原因に対する初期治療が終わった後も痛みが続いたり、何ヶ月も強い痛みを我慢し続けたりしていると、警報機自体が壊れて鳴り止まない状態(慢性疼痛)に陥ってしまいます。

痛みの悪循環と神経ブロック注射で断ち切る仕組みの図解イラスト(本町ファミリークリニック監修)

▲ 痛みが長引くメカニズム「痛みの悪循環」と神経ブロック注射による介入(当院オリジナル図解)

▼ 放置すると深まる「痛みの悪循環」のメカニズム

  1. 持続する強い痛みを感じる
  2. 交感神経が興奮し、局所の血管がぎゅっと収縮する
  3. 筋肉が硬直して血流が低下(血行不良)に陥る
  4. 酸素や栄養が届かず、痛みを引き起こす「発痛物質」が患部に蓄積する
  5. 蓄積した発痛物質が神経を刺激し、さらに強い痛みが発生する
  6. 痛みの恐怖や不眠から活動量が低下し、筋力低下や気力の減退へと波及する

このように、痛みは「我慢すればそのうち治る」ものではなく、放置することで痛みが新たな痛みを呼ぶ負のスパイラルを作り出してしまうのです。だからこそ、できるだけ早い段階でこの悪循環を断ち切る治療が必要になります。

なぜ湿布やロキソニンが効きにくい痛みがあるのか

「腰痛や足のしびれで整形外科に通い、ロキソニンや湿布を処方されたけれど、あまり効いている実感がない…」という経験をお持ちの方は少なくありません。

実は、痛みには大きく分けて以下の3つの種類があります。

① 侵害受容性疼痛(炎症や怪我による痛み)

打撲や捻挫、関節の炎症など。ロキソニンなどの一般的な消炎鎮痛剤(NSAIDs)や湿布が非常によく効きます。

② 神経障害性疼痛(神経そのものの障害による痛み)

坐骨神経痛、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、帯状疱疹後神経痛など。神経が傷ついたり圧迫されたりして発生するため、消炎鎮痛剤(NSAIDs)は効果が薄いという特徴があります。

③ 混合性疼痛(上記が混ざり合った頑固な痛み)

長引く腰痛や変形性関節症の多くは、炎症の要素と神経障害の要素が複雑に絡み合っています。

神経が関与している痛みには、神経痛専用の内服薬(ガバペンチノイド系など)を用いることもありますが、眠気やふらつきといった副作用で十分な量を服用できないケースもあります。

こうした「薬物療法だけではコントロールが難しい痛み」に対して強力な選択肢となるのが、神経ブロック注射です。

神経ブロック注射の仕組み|「リセットボタン」を押す治療法

「ブロック注射」と聞くと、「痛いところに麻酔を打って、一時的に感覚を麻痺させているだけでは?」と思われるかもしれません。しかし、神経ブロック注射の本質は単なる一時しのぎではありません。

痛み信号を脳へと伝えている神経のすぐそばに、局所麻酔薬(必要に応じて抗炎症薬)を的確に注入することで、以下の2つの決定的な効果を生み出します。

  • 効果①:痛みの伝達を遮断し、神経の過剰な興奮を鎮める
    暴走していた痛みのシグナルをストップさせることで、脳が感じる激しい苦痛を速やかに和らげます。
  • 効果②:ぎゅっと収縮していた血管を広げ、血流を劇的に回復させる
    局所麻酔薬の作用により交感神経の緊張が解け、血行不良だった患部に新鮮な血液が巡り始めます。これによって蓄積していた発痛物質が洗い流され、組織の修復が進みます。

つまり、神経ブロック注射はパソコンで言う「フリーズしたシステムを再起動するリセットボタン」の役割を果たします。悪循環を根本から断ち切ることで、自然治癒力を引き出し、痛みのない状態へと導いていくのです。

★【院長コラム】「トリガーポイント注射」と「神経ブロック注射」の違い

患者様から「以前、他のクリニックでトリガーポイント注射を打ってもらったことがあるのですが、何が違うのですか?」とご質問いただくことがあります。

トリガーポイント注射が決して悪いわけではありません。大切なのは「痛みの原因がどこにあるか」による使い分けです。

◆ トリガーポイント注射が適しているケース(筋肉の痛み)
主に「筋肉」や「筋膜」にできた硬いしこり(圧痛点)が原因の痛みです。デスクワークによる一時的な強い肩こりや背中の張りなど、局所の筋肉のこわばりには優れた効果を発揮します。
◆ 神経ブロック注射が適しているケース(神経の痛み・深い悪循環)
坐骨神経痛やヘルニア、脊柱管狭窄症など、「神経そのものが障害されている痛み」や「電気が走るようなピリピリ感」がある場合です。また、「トリガーポイント注射を打っても数時間〜数日で元に戻ってしまう」という慢性痛は、筋肉の奥にある神経の興奮と血流障害が根本原因であるため、神経ブロック注射の適応となります。

当院では、問診と丁寧な身体診察を通じて「痛みの発信源が筋肉なのか、神経なのか」を正確に見極め、患者様のお体に最も適した治療をご提案しています。

進化した「超音波(エコー)ガイド下神経ブロック」のメリット

「神経の近くに注射をするなんて、痛そうだし怖い…」と不安を感じる方もいらっしゃると思います。

かつての神経ブロックは、医師の指先で骨の目印を探りながら行う「盲目的(手探り)」な手技や、大掛かりなレントゲン透視装置を用いた方法が主流でした。しかし現在、ペインクリニックの現場では「超音波(エコー)ガイド下神経ブロック」が標準的な治療法として大きく普及しています。

▼ 超音波(エコー)ガイド下ブロックの3つの強み

  • ① リアルタイムで神経・血管・針先を見ながら施行できる
    超音波モニターで周囲の血管や目的の神経を常時確認しながら針を進めるため、誤って血管を傷つけるリスクを大幅に低減し、極めて安全にブロックできます。
  • ② 放射線被曝や造影剤アレルギーの心配がない
    レントゲン透視を使用しないため、お体に余計な負担をかけず、ベッドサイドの外来処置室でスムーズに受けられます。
  • ③ 狙った神経へピンポイントに薬剤を届けられる
    薬剤が目的の神経の周囲にしっかりと広がっていく様子を目で確認できるため、最小限の薬液量で高い鎮痛効果が得られます。

どんな症状が適応になる?当院で対応している主な疾患

当院のペインクリニック内科では、以下のような幅広い「長引く痛み・しびれ」に対して神経ブロック等の専門治療を行っています。

腰・お尻・足の痛み・しびれ

坐骨神経痛、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、すべり症、慢性腰痛症など

首・肩・腕の痛み・しびれ

頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニア、重度の肩こり、寝違え後の長引く激痛など

帯状疱疹の痛み・神経痛

帯状疱疹の急性期の激痛、皮膚症状が治った後も続く頑固な「帯状疱疹後神経痛」

肩・膝などの関節痛

五十肩(肩関節周囲炎)、変形性膝関節症など(ヒアルロン酸関節内注射の併用など)

安全に受けていただくための「3つの注意点」

神経ブロック注射を安心して受けていただくために、受診前にぜひ知っておいていただきたい大切なポイントがあります。

① 初診当日にすぐ注射できない場合があります(事前検査の実施)

神経ブロックは体の深い部分にある神経を狙う処置です。そのため、「血が止まりにくくなる病気がないか」や「血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用されていないか」を事前に採血や問診でしっかり確認する必要があります。安全を最優先するため、初診時は診察と検査を行い、別日にブロック注射を予約していただくケースが多いことをご了承ください。

② 1回の注射で魔法のように完治する治療ではありません

「1回打てば一生痛くならない」というものではありません。症状の程度にもよりますが、定期的に数回のブロック注射を重ねることで、少しずつ痛みの波を小さくし、悪循環を解きほぐしていきます。「日常生活を快適に過ごせる状態」をゴールに設定して治療を進めます。

③ 注射後の安静とお車・バイクの運転について

注射を行う部位によっては、一時的に足や腕に力が入りにくくなったり、しびれ感が出たりすることがあります。注射後はクリニック内のベッドで一定時間お休みいただき、問題がないことを確認してからご帰宅いただきます。安全のため、当日はご自身での自動車・バイク・自転車の運転はお控えください。

まとめ|痛みを我慢せず、専門医へご相談ください

「痛み止めを飲み続けて胃が荒れてしまった」
「もう歳だから、この痛みと一生付き合うしかないと言われた」
そんなお悩みを抱えて当院を受診される患者様はたくさんいらっしゃいます。

しかし、ペインクリニックでは内服薬の調整からエコーガイド下神経ブロック、関節内注射まで、痛みの根本的なメカニズムに合わせた多彩な治療の選択肢をご用意しています。

痛みを我慢することは美徳ではありません。あなたの生活の質(QOL)を守り、笑顔で日常を過ごしていただくために、まずはお気軽に当院までご相談ください。

【記事監修・執筆】

河合 茂明(かわい しげあき)
医療法人朋明会 本町ファミリークリニック 院長
・日本ペインクリニック学会認定 ペインクリニック専門医
・麻酔科標榜医 / 日本麻酔科学会認定 麻酔科指導医・専門医

長引く痛み・しびれのご相談は本町ファミリークリニックへ

「自分の痛みもブロック注射の適応になる?」「どんな治療が合うのか知りたい」など、まずはお気軽にご相談ください。
当院は本町駅23番出口から徒歩2分。平日夕方(19時まで)や土曜日午前も診療しております。

※お電話でのお問い合わせ:06-4395-5363(診療時間内)